正 月

Photo by Yukiko-KUROKAWA





 
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2010年1月に詠みし歌






参拾と 余歳(よとせ)経にけし 戯の座にて 石と黒とは ゆるき川なり






店に来て 青年の日のあくがれを   君は話せり 体揺すりて(再掲)




大抵は時間と供に慣れる香も百合は違へり主張は続く








凧揚げもいろはがるたもしなくなり  子らと囲めり かに鍋と柚子







背負われて乙女と旅するポメラニアン  リボンが揺れる 北新幹線








長毛の猫の毛玉にハサミ入れ アルパカの毛を刈る人思ふ


デパートで白いバッグを手に取れば 買わないけれどうれしい気持ち







ぶつ切りを食べ終え  そばで熟睡す おまえはどんなにまぐろ好き?


お寺にて生まれたおまえの好物は えび・いか・まぐろ お揚げの煮たの





暖かきココアに溶ける優しさを家族の椀に順に注げり



薄墨の空から光遠のいて 牡丹雪は しずしずと落つ



 

朝ごとに 蕾ふくらむ胡蝶蘭  何色なりや 問いかけてみる


思ほへば拾い帰りし胡蝶蘭  よくぞここまで生きてくれたり


スーパーの試食があだで売れざるということもあり  もって命せよ


「買い来る」と言ひしばかりに  我が猫の期待のまなざし寄け切れもせす


「びんちょうが好きよ きはだは嫌いなの」  もの言えずとも解る衝撃



 

この店の三十二年の歳月を内包せし君 雄和より来る

 



二世代を花で飾った振袖は三代待ちて 蔵に眠らむ





垂れ込めた空より落つる雪ひらは元は天女の羽衣ならむ




頭痛にて苦しむ君を我が猫は心傷めて覗き込みいる




 



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