「石積み」 秋田市手形赤沼界隈

Photo by Hohnan-KUROKAWA




 
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2009年7月に詠みし歌






鼻孔より遠くにありても匂いくる 赤いトマトよ キッチンの夏






文月の霧雨の中反芻す 返却の本 図書館の前 







幼な葉は いつのまにやら自信つけ 八方伸びゆく 身を踊らせて








半夏生 餌をこばみて立つ鳩に 堀風あたり 吹く方見つむ





朱の柱 間におわしますマリア様 半世紀前 園で会いし方







さやさやとエアコンの風すがすがし 約束された夏のしあわせ




すべての事 滞りなく進んだ日 真っ赤な夕焼け 両手に包む






肉屋さん 衰微の影は非情なり ショー・ケース の品  淋しく黙す


揚げたての トンカツ二枚ぶら下げて 歩いて帰る 主婦のしあわせ


ダイエットの敵 とんかつと対峙して 負けない私は非情な女





帰る時 必ず曲がる道向こう ポストの中に吸い込まれゆく


ダイエット 着々進行 絶好調 着れずに捨てた服もまた良し







老いゆきて 心配かける我なれど 親の心配できる幸せ

幼木を春に求めし銀モクセイ 葉四枚出ただけ 詐欺に会いしか


ともかくも まず猫缶をかごに入れ ゆっくり回る 午後のスーパー


空荒れて 政治も荒れて吠えるとも 心の中には三色すみれ





毎日の同じ数字に故障かと 見つめる朝のヘルスメーター


一夜にて2.1キロ減りし朝 標準越せど ややしぼみたる







  





満月に兎は餅をつくけれど 半月の時は臼だけスタンバイ (再掲)


満月に兎は餅をつくけれど 半月の時は兎御乱心


頼り来る息子の友をハラハラと心配している 十八のまま







若い頃 手首に浮いてた血管に 再びまみゆ お久しぶりね






だんご虫 超スピードで道よぎる かわいいと思った自分に驚く






体脂肪増えて迎えた還暦に いつまで残る 脂身雑念






庭に咲くバラの蕾があと六つ 全部あげようきょう還暦の君






還暦にびろうど赤に咲く薔薇を 賜りし朝 葉の雫綺羅と






肉食系男子であった我が夫 還暦迎え精進揚げ食む

空見つめ 君の姿を探すのが  意味なき行為と思いたくない

 





皆既なる日食四十三年後 その程度なら生きちゃう血筋


あったのね ダイエットによるフラストが 計測不能だ食欲爆発







梅雨さなか どしゃ降り霧雨 その間に間   見ゆる青空 有彩眩し






こんにちは 鉢の縁から青芽出て 胡蝶蘭てば何するつもり?






大粒のコスモスの種に雨しみて 猫も眠らせ 子も眠らせよ






梅雨の間に続く真夏日その後の 霧雨小雨  暑さなつかし






夜の街 人の情けで生き延びて トラネコの知能えらく研ぎ澄む






野良茶虎 恐れて家ネコ散歩せず 付き添い見張りで私服の刑事






シャワーから流れた水は勢い得 何か成すべく排口目指す


一匹の才覚だけで生き来たり 腹の座りはあっばれ茶ネコ






カメラ持ち撮影準備 猫を見し 愛し子のごと出がけの一枚






せめてもの贅沢 麦茶三パック 心のすきまに香味が滲みる






泣いていた時もあったね このごろはスックと伸びて大人の娘





  


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