「Roses」

Photo
 Yukiko-KUROKAWA





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掲載されている写真の撮影者と詠み人は同じです。

2009年3月に詠みし歌





ぴよぴよと聞こえ あわててメール見る 受信音を 変える季となる






道ばたの雪溶けやらぬ眩しき朝  あの年  弥生七日嬉しき







君を産み 痛みを知りてそののちの 我が人生は万物 愛(いと)し


ふわりふわり ゆきひら流る雛の月 夕べ出会いし  あなたを想ふ







雛の夜に訪れ来たる二人へと 飾りたる外 雪降り始む







香りして 頭あぐれば祝い花  そは  芯に立つ純白の百合






山肌に若草芽吹きその上を 雪解け水が流れるが好き






我が庭は 雪とけ終わり 土現わ 寒々しきこと 裸の心地






自営ゆえ 昇進の価値をよく知らず 息子の報せに 半端な祝辞


それよりも 仕事の無理が気にかかる 帰っておいでと 喉もとまで出る


我が娘 土日返上 御出勤 私はそんなに働いただろうか





朝の光 そろそろりっと 顔を出し 照っても良いかと 春神に聞く





水色の空に 出来たて雲乗せて 前奏曲の「春」 始まりぬ





カウントの増えていく様 神々し つたなき歌に畏れ抱きつ





さ緑を皆隠したる弥生雪  吹けどもさめぬ土の温もり





やさし雨 冬の終わりをなぐさめて しみる しみる 脳の奧まで


朝に昼に などか呼ばれる堤防に野草も川も我に優しき






マカロンやタルト並べてとりどりに 小さな店は 春陽(はるひ)に賑わふ





静けさが 店を休んだやましさを おおい隠して眠りへ誘ふ


「だってきょう いろんな事をしたんだよ 休んでいいでしょ」 自分に頼む


髪の毛をいじると グッタリ目は虚ろ 私の弱点 サムソンなりしか





春は靴 オレンジがかったキャメルかな されど魅かれる 紐の赤・黒


エーゲ海かく麗しや エナメルのターコイズ・ブルー 足に纏わむ

春うらら 古書店に立つ安価本 中味麗し ヴェネツィア遺聞


旅先で求めて置きし ガラス・シェード 割れて悲しや 不実な心





弥生の夜冷えてストヲブ焚き続け 雪に変われぬ雨の降りしに





陽あたりの全く悪い 庭寂し 球根二個埋づむ 日陰向くてふ

吹く風にハーブはうねりすぐり揺るイングリッシュ・ガーデンの女あるじ我は





静かなり 花梨は芽吹き 夜は更ける エッセィ持ちて ベッドに入らむ





刺すようなヘッドライトに浮かびくる 渦巻く霧は命ある如


待てずして球根植えて 春嵐 生命力の強さを祈る





伊予松山 子規・漱石の息づかい 蜜柑香れる 坂の上の雲


時計なら 純銀細工で丸窓の 貴婦人のような 我が猫の鼓動





茶碗乗る棚の下から向かひ見る 回転寿司の昼近き頃


若草の 色した名知らぬ花二輪 淡桃色の花らが囲む





寿司屋さん 先頭きって入ってく きょうの主役は あの子なるらし


春と知り 観葉植物 伸び始む 居間で暮らした冬よ さらばじゃ





身体に余裕あっての歌詠みか 見えぬ日もある 花鳥風月





雪の日に 観桜会の ニュース知りつ春選抜に心震わす


珈琲のポコポコ落つるを 居間に聞き  煙草の煙直ぐと昇る午後





バレルとは どんな量かは知らねども すごいんだろうと 密かに思ふ


埋ずもれる 球根の力 逞しき 氷点下の日々 ものともせずに



 



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