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SINCE 2008/6/30





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砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている
『サラダ記念日』  

寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら

思い出の一つのようでそのままにしておく麦わら帽子のへこみ 

大きければいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋

生ビール買い求めいる君の手をふと見るそしてつくづくと見る

「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛を言う君

落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

愛人でいいのと歌う歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う

たっぷりと君に抱かれているようなグリンのセーター着て冬になる

潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる

「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの

母の住む国から降ってくる雪のような淋しさ 東京にいる

手紙には愛あふれたりその愛は消印の日のそのときの愛

万智ちゃんがほしいと言われ心だけついていきたい花いちもんめ

我という三百六十五面体ぶんぶん分裂して飛んでゆけ

今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海

パスポートをぶらさげている俵万智いてもいなくても華北平原

いつもより一分早く駅に着く 一分君のこと考える

愛してる愛していない花びらの数だけ愛があればいいのに

シャンプーの香をほのぼのとたてながら微分積分子らは解きおり

親は子を育ててきたと言うけれど勝手に赤い畑のトマト

「クロッカスが咲きました」という書きだしでふいに手紙を書きたくなりぬ

ゆく河の流れを何にたとえてもたとえきれない水底(みなそこ)の石

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる

なんでもない会話なんでもない笑顔なんでもないからふるさとが好き

さくらさくらさくら咲き初め咲き終りなにもなかったような公園

思いきり愛されたくて駆けてゆく六月、サンダル、あじさいの花

自転車のカゴからわんとはみ出してなにか嬉しいセロリの葉っぱ

「スペインに行こうよ」風の坂道を駆けながら言う行こうと思う

愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人

はなび花火そこに光を見る人と闇を見る人いて並びおり『かぜのてのひら』

ここからは海となりゆく石狩の河口に立てば、立てば天啓

ひかれあうことと結ばれあうことは違う二人に降る天気あめ

お互いの心を放し飼いにして暮らせばたまに寂しい自由

今何を考えている菜の花のからし和えにも気づかないほど

男には首のサイズがあることの何か悲しきワイシャツ売場

散るという飛翔のかたち花びらはふと微笑んで枝を離れる

母と娘のあやとり続くを見ておりぬ「川」から「川」へめぐるやさしさ

恋という遊びをせんとや生まれけん かくれんぼして鬼ごっこして

「風よりも火だね」と我を呼びし人葉桜のした火を抱かず行く

チューリップの花咲くような明るさであなた私を拉致せよ二月

多義的な午後の終わりに狩野派の梅だけがある武蔵野の春

かすみ草にいたるやさしさ花束のできあがりゆくさまを見ており

さみどりの葉をはがしゆくはつなつのキャベツのしんのしんまでひとり

「うちの子は甘えんぼうでぐうたらで先生なんとかしてくださいよ」

なんとなくわかったような気になって「登校拒否」とその子を呼べり

古文漢文の解答欄の余白には尾崎豊の詞を書いてくる

四万十(しまんと)に光の粒をまきながら川面をなでる風の手のひら

水平線を見つめて立てる灯台の光りては消えてゆくもの思い

四国路の旅の終わりの松山の夜の「梅錦」ひやでください

我という銀杏やまとに散りぬるを別れた人からくるエア・メール

折りたたみ傘をたたんでゆくように汽車のりかえてふるさとに着く

定期券を持たぬ暮らしを始めれば持たぬ人また多しと気づく

『あい』という言葉で始まる五十音だから傷つくつくつくぼうし

いくつかのやさしい記憶 新宿に「英(ひで)」という店あってなくなる

やわらかな秋の陽ざしに奏でられ川は流れてゆくオルゴール

海荒れしのちに鎮まりきらぬもの我が少女期のように内灘

早春のアンビバレンス日記にはただ〈∞(無限大)〉の記号をしるす

「もし」という言葉のうつろ人生はあなたに一度わたしに一度

明治屋に初めて二人で行きし日の苺のジャムの一瓶終わる『チョコレート革命』

眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢の中でも私を抱くの

日曜はお父さんしている君のため晴れてもいいよ三月の空

優等生と呼ばれて長き年月をかっとばしたき一球がくる

「勝ち負けの問題じゃない」と諭されぬ問題じゃないなら勝たせてほしい

愛することが追いつめることになってゆくバスルームから星が見えるよ

幾千の種子の眠りを覚まされて発芽してゆく我の肉体

地ビールの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくねんたったらだあれもいない

蛇行する川には蛇行の理由あり急げばいいってもんじゃないよと

この星のオアシスとしてゆるやかに眠れる水を湿原と呼ぶ

資本主義のとある街角必要に応じて受けとるティッシュペーパー

昨日逢い今日逢うときに君が言う「久しぶりだな」そう久しぶり

年下の男に「おまえ」と呼ばれていてぬるきミルクのような幸せ

水蜜桃(すいみつ)の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う

深く厳しく我を愛せよ「地獄の門」刻んでいたるロダンの手より

肉じゃがの匂い満ちればこの部屋に誰かの帰りを待ちいるごとし

別れ話を抱えて君に会いにゆくこんな日も吾は「晴れ女」なり

きつくきつく我の鋳型をとるように君は最後の抱擁をする

星をもぐ女が夢にあらわれてマンゴスチンひとつ置いてゆきたり

まっすぐな棒を一本刺してくれ脳のだるさにねじれるぼくに

そそり立つなめらかな木のその下で泣くなよな傷ついたからって

さりげなく家族のことは省かれて語られてゆく君の一日

ブーゲンビリアのブラウスを着て会いにゆく花束のように抱かれてみたく

「愛は勝つ」と歌う青年 愛と愛が戦うときはどうなるのだろう

葉月里緒菜(はづきりおな)になれぬ多数の側にいて繰り返し読むインタビュー記事

男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす

妻という安易ねたまし春の日のたとえば墓参に連れ添うことの

響き合う土の昔や君という鈴を盗むに耳を掩わず

「です・ます」で話し続けている君の背景にあるファミリーランド

家族にはアルバムがあるということのだからなんなのと言えない重み

焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き

ぶらんこにうす青き風見ておりぬ風と呼ばねば見えぬ何かを

ポン・ヌフに初夏(はつなつ)の風ありふれた恋人同士として歩きたい

シャンプーを選ぶ横顔見ておればさしこむように「好き」と思えり

二週間先の約束嬉しくてそれまで会えないことを忘れる『とれたての短歌です。』

何層もあなたの愛に包まれてアップルパイのリンゴになろう

「今いちばん行きたいところを言ってごらん」行きたいところはあなたのところ

まっさきに気がついている君からの手紙いちばん最後にあける

一枚の葉書きを君に書くための旅かもしれぬ旅をつづける 『もうひとつの恋』

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